妊娠を理由に退職を迫られた|マタハラは違法、辞める前にまず相談を
妊娠を理由に退職を迫られて悩んでいませんか。妊娠・出産・産休育休を理由とする解雇や退職強要は、男女雇用機会均等法9条・育児介護休業法10条で禁止されています。相談先や退職代行の扱いまで根拠つきで整理します。
妊娠を会社に伝えた日、上司の表情が一瞬こわばったのを、わたしは今でも覚えています。前の職場で「人手が足りないのに困る」「このタイミングで産休なんて」と遠回しに言われ続けて、最後には「辞めてもらった方がお互いのためじゃない?」とまで言われました。辞めたいわけじゃないのに、言い出せない空気のなかで気持ちはすり減り、つわりも重なって、わたしは心も体も限界に近づいていました。あの頃、自分にどんな権利があるのか何も知らなかったんです。
でも、あとから知りました。妊娠・出産・産休育休の取得などを理由とする解雇やその他の不利益な取り扱いは、男女雇用機会均等法9条や育児介護休業法10条などで禁止されています。「妊娠したから辞めろ」という退職強要は、違法の可能性が高い行為です。退職するかどうかは、あなた自身の自由な意思で決めるもの。退職強要や自主退職への誘導に応じる義務はありません。この記事では、当時のわたしが知りたかった権利と相談先を、根拠とともに整理していきます。
妊娠を理由に退職を迫るのは違法なの?
結論として、妊娠を理由とする退職強要や解雇は、法律で禁止されている違法な行為の可能性が高いです。
男女雇用機会均等法9条は、妊娠・出産・産前産後休業の取得などを理由とする解雇その他の不利益な取り扱いを禁止しています。育児介護休業法10条は、育児休業の申し出や取得を理由とする不利益な取り扱いを禁止しています。
- 妊娠・出産・産休育休を理由にした解雇は禁止されている
- 「辞めてほしい」という退職強要も、不利益な取り扱いにあたる可能性が高い
- 退職するかどうかは、あなた自身の自由な意思で決めるもの
「妊娠したから辞めるのが当たり前」という空気に流される必要はありません。
マタハラとは具体的にどんな行為のこと?
マタハラとは、妊娠・出産・育児に関する制度の利用や状態を理由に、就業環境を害する言動や不利益な取り扱いをすることです。
職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(いわゆるマタハラ)は、男女雇用機会均等法11条の3や育児介護休業法25条で、事業主に防止措置を講じる義務が定められています。
- 妊娠・出産・産休育休を理由とした解雇、降格、減給などの不利益な取り扱い
- 「妊娠するなんて迷惑」などの言動で就業環境を悪化させること
- 産休や育休の取得をためらわせる、取らせない圧力
つまり「辞めろ」という直接の言葉だけでなく、辞めざるをえない空気をつくる言動も問題になり得ます。
「妊娠したから辞めて」と言われたら従うしかない?
従う必要はありません。退職は本人の自由な意思で決めるもので、退職強要に応じる義務はないからです。
会社から退職を促されても、それは「お願い」や「圧力」であって、あなたを一方的に辞めさせる効力はありません。あなたが「辞めません」と意思表示すれば、雇用契約は続きます。妊娠を理由とする退職強要は、不利益な取り扱いとして違法の可能性が高い行為です。
- 退職を迫られても、自分から辞めると言わなければ退職は成立しない
- 退職届にサインを求められても、納得できないなら署名しない
- その場で結論を出さず、持ち帰って相談する
わたしも当時、流されるように「辞めます」と言ってしまいそうでした。でも、一度立ち止まって相談することが何より大切です。
自主退職へ誘導されたときの危険は?
会社都合の退職を「自己都合」に見せかけられると、本来受けられる保護や給付で不利になるおそれがあります。
退職強要なのに「自分から辞めた」という形にされると、あとで「自由な意思で辞めた」と扱われ、不利益な取り扱いの是正を求めにくくなることがあります。退職届を急かされる場面では、特に注意が必要です。
- 「円満退職だから」と退職届を急いで書かされそうになる
- 退職理由を「一身上の都合」とだけ書くよう求められる
- 口頭で「辞める」と言わせて既成事実にしようとする
納得していないのにサインを迫られたら、いったん持ち帰る、もしくは断って構いません。記録に残る形で「退職を強要されている」状況を残しておくと、あとで相談するときに役立ちます。
産休・育休が取れないと言われたら?
産休・育休は法律で定められた権利で、要件を満たせば会社は拒否できません。
産前産後休業は労働基準法65条が定める権利で、産後8週間(一定要件のもとで6週間経過後)は就業させてはならないと定められています。育児休業は育児介護休業法5条以下にもとづく権利で、対象となる労働者の申し出を会社が拒むことは原則できません。
- 産前産後休業は労働基準法65条で定められた権利
- 育児休業は育児介護休業法にもとづく権利で、要件を満たせば取得できる
- 「うちは産休がない」「前例がない」は、取得を拒む正当な理由にならない
「制度がないから辞めるしかない」と言われても、法律上の権利は会社の制度の有無に左右されません。
マタハラはどこに相談すればいい?
まずは無料で使える都道府県労働局の窓口に、状況を整理して相談するのがおすすめです。
妊娠・出産・育児を理由とする不利益な取り扱いやハラスメントは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が相談・助言・指導や紛争解決の援助を行っています。心身がつらいときは、働く人のメンタルヘルスを支える厚生労働省の「こころの耳」も頼れます。
相談先と特徴の整理表
| 相談先 | できること | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) | 妊娠・出産・育児を理由とする不利益取扱い・マタハラの相談、助言・指導、紛争解決の援助 | 無料 |
| 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局) | 労働問題全般の相談・情報提供・あっせんの案内 | 無料 |
| 弁護士 | 法的な交渉・請求・代理 | 相談料・着手金など要確認 |
| 法テラス | 経済的に余裕がない場合の法律相談・費用立替の案内 | 要件により無料相談あり |
| こころの耳(厚生労働省) | 心身の不調・メンタルヘルスの相談 | 無料 |
どこに相談するか迷ったら、まずは無料の雇用環境・均等部(室)で状況を整理してもらうのが、わたしのおすすめです。
相談する前に準備しておくことは?
言われた言葉や経緯を、できるだけ記録に残しておくことが大切です。
口頭だけのやり取りは「言った・言わない」になりがちです。いつ・誰に・どんなことを言われたかを書き残し、メールやチャットがあれば保存しておくと、相談先に状況を正確に伝えられます。
- 退職を迫られた日時・場所・相手・発言内容をメモに残す
- メール、チャット、就業規則、雇用契約書を保存しておく
- 体調がつらいときは、無理に一人で抱えず早めに窓口へ連絡する
完璧にそろえなくても大丈夫です。覚えている範囲のメモがあるだけでも、相談はぐっと進めやすくなります。
どうしても職場に戻れないとき、退職代行は使える?
退職代行は選択肢の一つですが、マタハラの是正や交渉・法的対応は労働組合型・弁護士型でないとできません。
退職の意思を会社に伝えるだけなら民間業者の退職代行でも可能です。ただし、不利益な取り扱いの是正や条件の交渉、未払いや損害賠償などの法的な対応は、弁護士または弁護士法人でなければ報酬を得て行えません。民間業者がこれを行うと、弁護士法72条が禁じる非弁行為(弁護士でない者による法律事務の取り扱い)にあたるおそれがあります。
- 民間業者型:退職の意思の伝達はできるが、交渉や是正の請求はできない(行うと非弁のおそれ)
- 労働組合型:団体交渉権にもとづき、退職条件などの交渉ができる
- 弁護士型:交渉に加えて、不利益取扱いの是正請求や法的対応まで対応できる
退職代行のタイプ別にできることの整理表
| タイプ | 退職の意思伝達 | 条件の交渉 | 法的請求・是正対応 |
|---|---|---|---|
| 民間業者型 | できる | できない(非弁のおそれ) | できない |
| 労働組合型 | できる | できる | できない |
| 弁護士型 | できる | できる | できる |
大切なのは、退職代行で「妊娠を隠して辞める」必要はないということです。まずは自分にどんな権利があるかを知り、相談することを優先してください。
退職代行を選ぶときに気をつけることは?
運営主体のタイプと、対応できる範囲を最初に確認することが大切です。
「マタハラも対応します」とうたいながら、実際は交渉できない民間業者型というケースもあり得ます。料金の安さだけで選ぶと、いざ交渉や是正が必要になったときに対応できないことがあります。
- 運営主体が民間業者・労働組合・弁護士のどれかを確認する
- 不利益取扱いの是正や条件交渉など、自分が必要な範囲をカバーしているか確認する
- 契約前に対応範囲と料金を書面やメールで確認する
なお、退職代行サービスを紹介する記事には広告(アフィリエイト)が含まれる場合があります。この記事は特定のサービスを宣伝するものではなく、選び方の考え方を共有するものです。
よくある質問
Q. 妊娠を理由に解雇されたら違法ですか?
違法の可能性が高いです。男女雇用機会均等法9条は、妊娠・出産・産前産後休業の取得などを理由とする解雇その他の不利益な取り扱いを禁止しています。妊娠中や産後1年以内の解雇は、その理由が妊娠などでないと事業主が証明しない限り無効とされます。心当たりがあれば、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談してください。
Q. 「辞めてほしい」と言われたら辞めるしかないですか?
辞める必要はありません。退職は本人の自由な意思で決めるもので、退職強要に応じる義務はありません。あなたが「辞めません」と意思表示すれば雇用契約は続きます。納得できない退職届にはサインせず、いったん持ち帰って相談しましょう。
Q. 「うちは産休がないから辞めて」と言われました。本当に取れないのですか?
法律上の権利なので、会社の制度の有無に左右されません。産前産後休業は労働基準法65条、育児休業は育児介護休業法にもとづく権利で、要件を満たせば取得できます。「前例がない」は取得を拒む正当な理由になりません。
Q. マタハラはどこに相談すればいいですか?
都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が、妊娠・出産・育児を理由とする不利益取扱いやマタハラの相談を無料で受け付けています。労働問題全般なら総合労働相談コーナー、心身がつらいときは厚生労働省の「こころの耳」も利用できます。
Q. 退職代行を使えばマタハラの是正までしてもらえますか?
退職代行のタイプによります。退職の意思伝達は民間業者型でも可能ですが、不利益取扱いの是正や交渉、法的請求は労働組合型・弁護士型でないとできません。民間業者が交渉すると弁護士法72条の非弁行為にあたるおそれがあります。是正を望むなら、まず労働局や弁護士へ相談することを優先してください。
まとめ
妊娠を理由とする退職強要や解雇は、男女雇用機会均等法9条・育児介護休業法10条などで禁止されており、違法の可能性が高い行為です。退職するかどうかは、あなた自身の自由な意思で決めるもので、退職強要や自主退職への誘導に応じる義務はありません。産休・育休は法律で定められた権利で、会社の制度の有無に左右されません。まずは無料の都道府県労働局・雇用環境・均等部(室)に状況を整理して相談し、心身がつらいときは「こころの耳」を頼ってください。退職代行は選択肢の一つですが、マタハラの是正や交渉ができるのは労働組合型・弁護士型に限られます。妊娠を隠して辞める必要はありません。まずは自分の権利を知ることから始めてください。
🍀 陽菜からあなたへ
あの頃のわたしは、妊娠を伝えただけで肩身が狭くなり、辞めたくないのに辞めなきゃいけない気がして、心も体も追い詰められていました。でも、妊娠はあなたが責められることではありません。あなたには法律で守られた権利があります。一人で抱え込まず、まずは無料の窓口に話してみてください。あなたとお腹の赤ちゃんが、安心して次の一歩を選べることを、わたしは心から願っています。